コンピューターを起動する「Booting」の本当の意味は?
ブートする
コンピューターを開始するときに「ブートする」と言うが、これはもともとブーツを履きやすくするために引っ張る部分(bootstraps)に由来したものと考えられる。 ここでいうbootstrapsは靴ひもではない。

Bootstrapping - Computing https://en.wikipedia.org/wiki/Bootstrapping#Computing
では、なぜ、どのような経緯でコンピューターの起動過程をブートストラッピングと呼ぶようになったのだろうか。これについては正確な事実は分からないようである。
いくつか説があるが、まず英語圏の有名な逆説(paradox)として"Pull oneself up by one’s bootstraps"という言葉がある。一見できそうに見えるが、実際にはできない、つまりばかげていて実現不可能な方法を意味する表現として使われる。
その後、この表現は別の意味でも使われ始め、1922年ごろには他人の助けなしに自立的に自分を改善していく方法という意味で使われたという。
Bootstrapping - Etymology https://en.wikipedia.org/wiki/Bootstrapping#Etymology
Tall boots may have a tab, loop or handle at the top known as a bootstrap, allowing one to use fingers or a boot hook tool to help pulling the boots on. The saying “to pull oneself up by one’s bootstraps”[3] was already in use during the 19th century as an example of an impossible task. The idiom dates at least to 1834, when it appeared in the Workingman’s Advocate: “It is conjectured that Mr. Murphee will now be enabled to hand himself over the Cumberland river or a barn yard fence by the straps of his boots."[4] In 1860 it appeared in a comment on philosophy of mind: “The attempt of the mind to analyze itself [is] an effort analogous to one who would lift himself by his own bootstraps."[5] Bootstrap as a metaphor, meaning to better oneself by one’s own unaided efforts, was in use in 1922.[6] This metaphor spawned additional metaphors for a series of self-sustaining processes that proceed without external help.[7]
ブートストラップの本当の意味は?
整理すると、大きく次の2つの意味で使われていたようである。
- 実現不可能または愚かな方法
- 自立的に自分で改善していく方法
ここで初期コンピューターの起動過程について考えてみる。
- CPU/RAM/IOだけがあるコンピューターの場合
- 電源を入れた直後、RAMにはプログラムデータがない。
- 外部記憶装置からプログラムを読み込むにはローディングプログラムが必要である。
- ローディングプログラムをメモリへロードするには、さらに別のローディングプログラムが必要である。
上記のような状況になるため、自力ではまったく満足に動作できない。この状況は1つ目の意味の"Pull oneself up by one’s bootstraps"を思い起こさせる。
実際には、内蔵されたトグルスイッチなどを使って1バイトずつコードを書き込み、入力が完了したら実行する形で動作する。 パンチカードやテープなどの外部記憶装置からデータを読み込んでRAMにロードし、その後ロードした内容を実行するコードを書く場合もあっただろう。
外部記憶装置などからプログラムをRAMへ自動的にロードする仕組みがある場合、電源を入れて基本ボタンなどを押すと、外部記憶装置からデータを読み込む専用回路が動作する。外部記憶装置からRAMへのプログラムロードが完了するとCPUが初期化され、基本メモリ番号から処理が開始される。 必要に応じて、さらに別の入力装置からプログラムをロードし、より複雑な処理を実行する。 これは2つ目の意味の"Pull oneself up by one’s bootstraps"を思い起こさせる。
Wikipediaでもこの意味で説明されている。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bootstrapping#Computing
上記の内容はすべて推測だが、おそらくコンピューター初期にはこのような状況が多かったのだろう。
当時の関係者は皆、「これは本当にpull itself up by its bootstrapsの状態だな」という感覚があったのではないかと思われる。
そのため、ブートストラッピングという単語を自然に使い始め、それが定着していったのではないだろうか。